エンジンがエネルギーを産み出すためにはガソリンを空気と混合させる気化装置が必要となる。
このエンジンに燃料を供給する際にガソリンと空気を混合させてエンジン内へガソリンを噴射するシステムには、従来から使用されているキャブレターと燃料噴射装置の2種類の気化装置が存在する。
ここでは、従来方式であり現在も尚、広く普及しているキャブレターの構造と原理についてもう一歩踏み込んでチェックしていこう。
キャブレターの構造は車種や種類によって異なるが、原理としてはアイロンがけで使用する霧吹きの原理と同じである。
その原理とは、キャブレター内の空気速度の変化によって生じる負圧を利用する仕組みじゃ。
キャブレターにはベンチュリ管と呼ばれる菅の一部が細く絞られた管があり、この絞られた部分で空気の流入速度は加速するようになっておる。
この空気の加速時にベンチュリ管の細い部分に接続されている燃料が急激に吸い上げられ燃料が霧状に噴射される構造となっておる訳じゃな。
排気ガス規制の後にキャブレターの製造は行われなくなったが、中古市場では今も尚、キャブレター車の数は多い。
キャブレターの構造は霧吹きの原理と同じと言ったが、大まかには以下の系統に分類することができるのじゃ。
【キャブレターの構造・系統による分類】
☆フロート系統
☆ロースピード系統
☆ハイスピード系統
☆パワー系統
☆チョーク
では、ここからは各種系統の役割をひとつずつ確認していくとしよう。
フロート系統はフェーエルポンプから送られるガソリンを貯留しておく装置。
フロートとニードルバブルでガソリン量を一定に保つ役割をもつ。
スピードの変化に伴うスロットバルブの動作を操作しべンチェリー部の空気の流入速度を変える装置。
ハイスピード系統は、ファースト・セカンド系統がありより高速域ドライブに達するとセカンドシステムが対応。
高速道路などの一定スピード以上で走行する際に稼動する装置。
メインジェット内部に専用のパワーバルブとパワージェットを装着しインテークマニホールド内の負圧が高くなるとバルブが開き燃料を流入させる。(※インテーク=吸気)
季節に関係なく一定の性能を保持する燃料噴射装置に対してキャブの最大の弱点とも言える寒い日のエンジンの始動を補助する装置。
チョーク系統は寒冷地では特に重要な役割を持つ。
キャブレターの種類は、マイナーなものを含めると多くの種類が存在する。
尚、比較的広く知られているキャブを挙げておくと以下のようなキャブの種類が存在するのぉ。
【代表的なキャブレターの種類】
☆CRキャブレター(FCRキャブ)
☆UVキャブレター
☆CVキャブレター(SUキャブ)
これらは代表的な主なキャブの種類じゃ。
尚、これらのキャブはそれぞれ独特の特徴がある。
各種類別の主なキャブレターの特徴は以下のとおりじゃ。
CRキャブレターはクラッチ及びスロットル動作がベンチェリーと直接リンクしている形式。(FCRキャブの同じ)
CRキャブは急激なクラッチ操作が起きた場合、ベンチェリー内の負圧変化により走行が不安定になるというデメリットがある。
FCRは機構はCRと同様だがバルブがフラット形状のCRキャブを指す。
CRキャブがベンチュリーとスロットルバルブを兼ねているのに対し、CVキャブレターはベンチェリー下部に専用のバタフライバルブを装着し可変する。
尚、SUはCVキャブの商品名である。
キャブレターを製造しておるメーカーは日本だけでなく世界中に数えきれないほどのメーカーが存在する。
中でもキャブレターの代表的なメーカーの種類としては以下のようなメーカーが挙げられる。
【主なキャブレター製造メーカーの一覧】
☆ソレックスキャブレター
☆ウェーバーキャブレター
☆カータキャブレター
☆ストロンバーガー
☆ケイヒンキャブレター
ソレックスはキャブレター製造では言わずと知れたフランスの老舗企業じゃ。
設立当初はラジエーターの製造企業として立ち上げられたが徐々に需要が高まってきたバイクを中心としたキャブの製造を経営の中心と据え成長を果たしておる。
第一次世界大戦前のバイクは自動車に原動機をつけたような簡易的な原動機付き2輪車であったが、現在のバイクに近い形状へと技術が進展できたのもソレックスのキャブ技術が大きく貢献しておるのじゃよ。
ウェーバーは、キャブレターの名門メーカーとして知られるイタリアの老舗企業じゃ。
メーカーの名前は設立者であるエドアルド・ウェーバーの名前が由来となっておる。
現在はフィアット系のマニエッティ・マレリの傘下に入りイタリアではなくスペインで製造が続けられておる。
キャブの需要が世界的に低下しておる現在では、製造部門も大きく減少したがウェーバーが持つブランドイメージは今も尚、根強い人気を誇っておるのじゃよ。
日本市場では前述したソレックスとウェーバーの2大メーカーのシェアが大半であったが、現在は排ガス規制の影響でキャブレター自体の取り扱いが大きく減少しておるのじゃ。
キャブはそれぞれ空気の流入の流れによって情報から下方へ空気が流れる「ダウンドラフト」や現在は使用されなくなっておるがダウンドラフトの逆の流れをもつアッパードラフト。
そして空気の流れが横方向へ流れる「サイドドラフト」などの種類があるのぉ。
キャブの使用が減少した現在。あと数年もするとキャブレターの存在自体を知らない世代がやってくるのかもしれんのぉ。
時代の流れでもある為、仕方のないことではあるが、様々な種類のキャブがあり多くのメーカーがキャブの技術革新に取り組んできた歴史は覚えておきたいものじゃ。