自動車部品の中でも燃費向上グッズとして人気が高い後付の部品のひとつにアーシングケーブルがある。アーシングを装着することでエアコンの効きが良くなる。ヘッドライトが明るくなる。はたまた燃費がアップする!など様々な魅力的なメリット効果がうたわれているが、本当にアーシングを装着するだけでそんな効果が得られるのだろうか?
ここでは魅力的な話題ばかりが多いアーシングケーブルの効果について検証する。
【ほぼ確実に効果はある】
アーシングケーブルの装着はエンジン電気系統のメカチューニングの中でも古くから人気が高いチューニング部門のひとつ。
アーシングの装着によって実燃費が向上した。ヘッドライトが明るくなった。トルクがアップしたなど様々な効果が話題ともなっている為である。
電気系のチューニングに詳しいものであれば、直流配線の仕組みから見て自動車の電気配線の大半がプラス極に集中している事に気づいておるはずじゃ。
もちろん直流はマイナス極の受け側が必要じゃが、自動車はこのマイナス側をボディーで代用しておるのが現状じゃ。
自動車のボディーは銅や銀と比較するとやや劣るものの電導性が高い鉄もしくはアルミ素材で製造されておる。
ボディーでマイナス極を代用するメリットは専用の機器類を必要としない点、そして軽量化の利点があげられる。
アーシングの効果が期待できる理由は、ボディーへの配線を増やしアースポイントを増加させることでマイナス側の電気の流れがスムーズに進行する点にある。
もちろん現在の自動車はどれもアーシングを使用せずともしっかりと性能は発揮される構造となっておる。
しかし、補助的にアースポイントを増加させてあげることでエンジンの効率を引き上げる効果をもたらす原理が働くことは間違いない事実じゃ。
※アースポイントの増設は電導性を高める効果が期待できるのは事実
新車を販売しているディーラーが新車の販売時にオプションで車種専用のアーシングを用意しているケースもあることから、ディーラー側もアーシングの効果を認めていると言えなくもないしのぉ。
シンプルに電気系統の原理と仕組みを考慮すると理論上としてはアーシングの装着によって燃費アップや電気系統の出力アップが期待できることになる。
※理論上はアーシングケーブルの装着によって電気系の出力アップ効果は期待できる
最近はアーシングケーブルキットを自分で購入して自分で工具を揃えアーシングの取り付けまでをしてしまうDIY派ユーザーが増えてきている。
特にメカに詳しくない人であってもアーシングの取り付けは自分で行うことができるのだろうか?
また取り付けを行う際の接続場所に決まりはあるのだろうか?
結論から言ってしまえばアーシングキットが市販されている時点で自分で取付が可能である点は想像できる。
筆者も自分自身で装着をしているし、特に難しいこともない。
ここではアーシングの取り付けを自分で行う際に把握しておくべきポイントについて確認していく。
【車種によって異なるが多くは同じ】
現在市販されておるアーシングキットの場合はその多くが車種別で販売されており、しっかりと説明書が入っている為、基本的には説明書通り取り付けを行えば問題ない。
キットに同封されている説明書自体は大手家具店で販売されている組み立て式家具の説明書のように、かなり簡易的な説明書が多く解りにくい部分もあるが時間を使えば組み立てから取り付けまで素人でも十分出来る。
家具の組立ができる程度の力量があればおそらくアース接続も自分で行うことができるじゃろう。
アーシングの取り付けを行う際に若干迷うのはアーシングの接続場所。
一方はバッテリーのマイナス端子側に収束して取り付け、もう一方は車種別によって接続する部位が異なっておる。
詳しくは説明書を見ることが大切だが、どの車種でも基本的に取り付ける部位はそう変わらないものじゃ。
ここでは一般的な日本車のケースにおけるアーシングの接続部位について説明を加えておく。
オルタネーターは主に電子制御システム系統の電源供給、そしてヘッドライトへの電源供給に関与する。
アーシングの装着によってヘッドライトの明るさの変化が体感できるケースは多い。
スターターモーターはその名の通りエンジンを始動させるための電動機モーターのことじゃ。
やや古い車種の場合は、バッテリーの劣化だけでなくボディーや配線回りのサビが原因で電気系統が弱っているケースもある。
アーシングの装着でエンジンの始動の体感スピードが向上するケースはアーシング効果と言えなくもないが、他の原因も考慮が必要じゃ。
前項では自分でアーシングの取り付けを行うケースについて触れた。アーシングキットを購入し取り付けまでを自分で行うことは十分可能だ。尚、ここではアーシングの取り付けをカーショップや整備工場に依頼する場合の工賃についてチェックしていく。確実にアーシングケーブルを装着したい場合やメカが苦手な女性がアーシングケーブルの設置を検討している場合は作業料金についても気になるもの。
当然店舗によっても取り付け工賃は異なるが、ショップに取り付けを依頼した場合の大まかな相場の目安にについても把握しておこう。
アーシングケーブルの接続をショップに依頼するケースは大きく分けて2つのケースが考えられる。
一つ目はおそらく現在最も多いケースであるアーシングケーブルを自分で購入してショップに持ち込んで装着してもらうケース。
自分で接続してみようかな?とヤフオクなどでアーシングケーブルを購入した場合であってもやはりエンジンルームを覗いた時点で尻込みしてしまうケースもあるはずじゃ。
このケースでは、ショップ側としてはアーシングを販売した際の利益が得られずに作業工賃だけで利益を求める事になる為ショップによって工賃の単価が大きく異なってくる。
少なくとも言えることは、後述する購入したショップで取り付けまでを行いケースと比較するとほぼ確実に割増しになるという事じゃ。
尚、持ち込みの取り付け工賃の相場は2500円~4000円程度が妥当なラインじゃろう。
【アーシングケーブルを持ち込んだ場合の取り付け工賃の相場】
※2500円~4000円程度が目安。これ以上高い工賃を請求された場合は、他のショップを尋ねたほうが良い。
持ち込みの取り付け工賃は意外と高額に感じたかもしれない。
しかしアーシングケーブルを購入したカーショップで取り付けまで行なってもらうケースの場合は工賃は安くなるケースが大半じゃ。
もちろん店舗や地域によっても相場は異なるが、多くのケースでは取り付け工賃が2000円以下で収まるじゃろう。
かなり良心的なショップであれば取り付け工賃無料の場合もあるが、そのケースではそもそも製品が高いケースもあるので逆に注意が必要じゃ。
【アーシングケーブルを購入したショップで取り付けを依頼した場合の工賃の相場】
※1000円~2000円程度が目安。稀に無料というケースもあるが、無料の場合は販売価格が高い店舗のケースもある為、調査が必要。
アーシングケーブルの装着を自分で行う予定がない場合は、まず取り付け工賃を近くのカーショップで確認しておくと良い。
この際に、「アーシングケーブルの中古を譲ってくれる先輩(家族でも友人でも良い)がいるのだが、取り付けをしてもらえますか?」と尋ねた上で作業工賃を確認してみると良いじゃろう。
また、「こちらで購入した場合は無料で取り付けをしてもらえますか?」と確認しておくと、「うちで買ってもらえるなら◯◯円程度の作業工賃でいいですよ。」と具体的な金額を教えてもらえるはずじゃ。
工賃を確認できたら、価格が安いネット等で製品を検索し、作業工賃を含めた金額で自分で簡易的に見積もりをとり、より安くできる方を選択するという手もあるのぉ。
尚、工賃までを含めた金額が大幅に変わらない場合は、ショップとの信頼関係を築く上でも実際の店舗で購入から取り付けまで行なってもらう方が得策じゃろう。
電気系統の出力アップ、燃費の向上と利点ばかりが公表されているアーシングケーブルの取り付け。ディーラーまでもがオプションに配置するなど効果が期待されてはいるが、逆に装着した際のデメリットはないのだろうか?
ここではアーシングを設置した際に生じる不具合などデメリットに関する可能性についてチェックしよう。
【電位差が生むノイズの可能性】
アーシングを装着した際に考えられるデメリットのひとつにオーディオ系統のノイズ発生問題がある。
これはアーシングの装着によって電圧が向上した際のバッテリーの電位差から生じるノイズ音の可能性が検討される。
アーシングで音響効果を高める予定が逆にオーディオにノイズを発生させる結果となる可能性があるという訳じゃ。
このケースではアーシング装着時と非装着時のノイズの変化を自分の耳で良いので再度確認して見ることじゃ。
もしアーシングケーブルの非装着時であってもオーディオにノイズが生じている場合。
このようなケースではアーシング装着が問題となっている訳では無いため、オーディオの調子が悪いだけでアーシングが責任であるとは限らないケースもあるため、思い込みには注意が必要じゃ。
※アーシングを装着することによって電位差によってオーディオからノイズを生じるケースがある
電気系統の効率がアップすることによって適正値の電流が流れやすくなると各電気系統は装着前の時点よりも高い性能を発揮できるようになる。
しかし効率よく性能を発揮することは逆にパーツの寿命を短くする可能性もある。
ヘッドライトが明るく点灯するようになった分、ヘッドライトの交換頻度が上がるなどのケースが想定されてくる訳じゃ。
しかし現在は従来のキセノンバルブから明るさと耐久力を兼ね備えたHIDハロゲンバルブへの移行が急速に進んできておるように製品そのものの技術レベルが上がってきている為、アーシングによるデメリットと捉える必要があるかどうかは疑問も残るのぉ。
その為、欠点と言えるかどうかは疑問も残るがアーシング設置によるデメリットのひとつとして念の為、把握しておいても良いじゃろう。
アーシング装着による欠点をあげるとすると、やはり前述したオーディオ系のノイズ問題が最も発症の可能性が高い問題点。
尚、自動車のオーディオ機器類の電圧に関しては簡易的に電位差を測定できる抵抗計などの測定機器類を持っておくと便利じゃよ。
トヨタの天才たまごとして登場したエスティマ。
友人が所有するエスティマは新車購入時から既に10年が経過しているが、ワンオーナー車でまだ見た目も内装もまだまだ綺麗である。
かなり大切に乗ってきた愛車ではあるのだが、最近になりエンジン始動が遅くなるという体感を得るようになってきた。
この場合はバッテリー交換という手が一般的だがここでは話題となっているアーシング装着を実践してみた。
【アーシングの装着】
エンジン始動が経年劣化と共に遅くなるのはどの自動車にもあること。
エンジンの始動が遅くなり始める原因は大方バッテリーの弱りである。
キー回転時に「キュルルルルー」という音がするようになり、その長さが徐々に長くなってくるのが大半のケース。
これはよくあるパターンである。
このケースでは普通はまずバッテリーの交換を検討する。
バッテリー交換は慣れてしまえば簡単。
ネット等でバッテリーを購入。仕入れたバッテリーは工具があれば30分もあれば自分で交換までできてしまう。
今回も根本的にバッテリーの使用が3年目に入っていた事もありバッテリーそのものが寿命であることも明確。
その為、バッテリーを別途発注してはいたが友人のエスティマではバッテリーの到着が遅れた為、先にアーシング装着を実践することにした。
尚、今回アーシングを行うエスティマは購入以来足回りからエアロ関係など一切の手を加えていない完全なノーマル車。かつ寒冷地使用のAT車である。
エスティマへのアーシング装着後に確認できた目に見える変化は結論から述べると2点。
1点はエンジン始動がスムーズになった点。
前述したようにバッテリーは既に完全に寿命の域に達している。
しかし、ストレスを感じていた始動は明らかに短くなっている。1台の事例では何とも言えない部分もあるがアーシング以外は何も手を加えていない点を考慮するとこれはアーシングの効果と見ても良いだろう。
このことからもスターター電動機(モーター)へのアーシング効果には正直驚くほどの体感を得ることになった。
※スターターへのアーシング効果は確かに体感できた
そしてもう一点の変化はヘッドライドが若干ではあるが明るくなったように感じた点。
友人はエアコンも快調になったというが、感覚的な部分でありこれは何とも言えないが、毎日乗っている本人が言うため、電気系統にプラスの影響をもたらした可能性があったのかもしれない。
本当に効果が疑問視されているアーシングではあるが、電気系統へプラスの影響をもたらす可能性が高い。と言うことはやはり言えそうである。
最も期待されるのがアーシング装着による燃費アップの部分。
しかし燃費アップに関しては全くと言っていいほど効果が確認できなかった。
今回の燃費の測定は燃費計による測定ではなくガソリン満タン法というアバウトな測定。
結果は横ばい・・・・というよりも数値だけでは若干燃費が低下した。
同条件走行ができない限りこれは実証しづらい部分であるが今回のエスティマでの効果は確認できなかった。
但し、燃費計で同条件の走行を続けた場合であればもしかしたら燃費の向上部分が確認できるのかもしれない。
ただ、正しい燃費の測定には時間も回数も必要でありこれは一般ユーザーには無理な話。
この件に関してはまた機会があれば燃費計などでも測定したいと思う。
最終的にバッテリー交換まで行なったエスティマであるが、バッテリー交換前にエンジン始動で大きな変化があった点はアーシングが確かな効果をもたらしている事実である。
但し、この効果の程度に関してはボディーのヘタレなど年式によって大きく異なってくるのではないだろうか?
新車で装着した際に、数値が大きく変動するようであればエコ競争を繰り広げている現在の自動車業界を考えると最初から適切なアースを設置しているはずである。
今ではディーラー車であっても購入時にオプション設定でアーシング装着を行うかどうかの選択ができるようになっている。
ディーラーが販売時にアーシング装着をオプションで設定できるようにしているということは、ディーラー自身がアーシングの効果を認めている証ともとれるように思う。
ただ単純に「オプションで利益を上乗せする」という発想だけでディーラーがこのような効果もわからない装備をつけさせるなんて冒険をするとは思えない為だ。
しかし、もし本当にアーシング装着による燃費アップ効果が期待できるのであれば、これほどのエコカー戦争とも言える戦いが行われている日本の自動車市場で最初から適切な設定をしていない理由が見えてこない点が引っかかりもするのだが…
アーシングの効果に関して感じたことをまとめると、結局のところマイナス側にあたる自動車のボディーは経年劣化に伴って酸化によるサビやアース接続部位・バッテリー接続部のサビなどが発生する。
このサビが機能低下をもたらす結果、古い車種であればあるほどアーシング装着効果を体感しやすくなっている。
このようにシンプルに捉えておくと良いと感じるのだがどうだろうか?
電気系統の無駄が減少し効率が向上する事は、あらゆる機能の安定化やレベルアップに繋がる可能性は高い。
アーシングというシンプルな装備で大きく性能が変化してしまうような事は今の自動車市場では考えにくい部分でもあるが、個人的には古い車種になれば、徐々に効果が期待できるようになる可能性を持つと捉えておきたいと思う。